阿栗 満(Agri‐man)氏の農的人生(1) 農作業を終えて帰る道すがら見る夕陽と夕焼け
武蔵野線沿線の畑での農作業を終えて、自転車で新河岸川の土手の道を走っていると左側の小さな丘の雑木林の向こう側に、オレンジ色の大きな丸の形をした夕陽が見える。思わず自転車を止めた。太陽を見た。夕陽であれば、太陽を見ることができる。人生も仕事で忙しく、まさに真っ最中の時は、自分の人生を見つめることは難しい。この小説の主人公、阿栗満はあと1年で満80歳になる。沈んでいく太陽を見つめながら、ふと自分の人生も夕陽のように沈みつつあるとの感慨に襲われた。太陽は赤く光りながら、空を夕焼けで染めながら沈んでいくが、自分は光りながら沈んでいるだろうか。
最近阿栗は自分と向き合うことが多くなった。現役で仕事をしている時期は布団の中で仕事のことを考えながら眠ることが多かったが(眠れない時もあった)、今は自分と向き合いながら眠るのが習慣となった。
布団の中で腹式呼吸を20回ほどやってそれから自分と対話する。阿栗はある本からヒントを得て、自分の中に賢明なもう一人の自分がいることに気付かされた。その賢明なもう一人の自分と対話をする。賢明なもう一人の自分が今日の一日を生きてきた現実の自分と対話をする。この対話を通じて現実の自分を「客観的」に見ることができる。「客観的」に見ることで気持ちが落ち着いていく。そのような対話をしながら、阿栗はさらにもう一人の自分もいることに気付いた。それは「思いやる」自分だ。現実の自分を肯定的に励まし、労(ねぎらう)うもう一人の自分。今は人が人を労うということが少なくなっている。
阿栗は自分を否定的に見るのが習慣というか、心の癖になっている。「思いやる自分」はそのような自分をそのまま受けとめ、受入れ、「今日も一日お疲れ様でした。やるべきことをやりましたね。今日も阿栗さんらしく、最善を尽くしたと考えましょう。そして後は大いなる方に全てを委ねて眠りましょう。素晴らしい一日でした。良く眠って疲れを癒し、明日もまた元気に一日を始めてください。新しい希望の一日が待っていますよ」
そして二人のもう一人の自分に加えて、「気分転換」のための自分の存在にも気付かされた。「気分転換」の自分は暗い気持ち、沈んだ、うつ的な気持ちでいる自分に明るい気持ち、晴れ渡った、澄んだ青空のような気持ちを与えてくれる。「気分転換」のために、自分の中に小さな光ではあるが、輝く光があることを教えてくれる。
今、阿栗は毎日、自分の中の「もう三人の自分」との対話を続けている。
そして阿栗は毎日日記を書いている。現在の阿栗の生活は以下3つのことによって支えられていると言ってもいい。
1.自分という存在との対話。3人の「もう一人の自分」に助けられている。毎日、もう一人の自分と対話している。
2.日記を毎日書く。今日やるべきこと、したこと、できたことをB5のノートに3~4ページ書いている。日記を書くために朝晩それぞれ30分~50分の時間をとっている。
3.一日一生。かけがいのない人生。今日一日は特別な日。今日一日、なすべきことをやり遂げよう。そして自分の人生は残りあと1年の覚悟で。
これからは野菜のように1年毎に生きていく。
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