阿栗 満(Agri‐man)氏の農的人生(6)「農」の癒し効果
野菜、果樹栽培作業は幸福ホルモン、オキシトシンの分泌を増進する
(農の持つ新しい可能性開拓)
パソコンの電源を切り、仕事を切り上げて、自転車で武蔵野農園に向かう。デスクワークは午前中に終わるようにして、昼食を摂った後は一休みして農作業開始。野菜、果樹栽培作業は幸福ホルモン、オキシトシンの分泌効果があることを阿栗は実感している。畑に近づくと風景が開けてくる。大空、緑の田畑。
農園に着いたらまず農園の区画全体を見て、野菜達に声をかける。市民のやる有機栽培はトンネルもなく、野菜達は自然環境の中に身を晒している。雨風、晴れ曇り。今年のような炎暑の中では、熱い太陽光線を受けている。できれば遮光シートを掛ければいいのだが、今年は敢えて掛けないで栽培している。
何か問題が発生していないか、確認する。病虫害は出ていないか、水不足などで枯れかかっているのはないか、順調に成長しているか。それから画区画毎にそれぞれの野菜の成長状態を観察する。そして作業の段取りを決める。
今日は大玉トマトに1.8mのしっかりした支柱を立て、整枝して腋枝を剪定して支柱に誘引する。もう少し早くやるべきことだったが、まだ間に合う。腋枝が沢山でている。
ミニトマトにも1.8mのしっかりした支柱を立て、整枝して腋枝を剪定して誘引する。こちらは腋枝がまだ多くは出ていない。
➂キュウリの収穫。今日は5本収穫できる。長さは20㎝を超えてきている。
ナスの収穫。今日は3個。花が沢山ついている。
サトイモは1回目の追肥をして土寄せした後、順調に茎葉が大きくなっている
サツマイモはツル返しして、ツルが伸びる方向を決めた。その方向でツルが伸び始めている。
野菜の手入れをしているうちに、土にも触れて、いつの間にか気分が落ち着いていることに気付く。嬉しい。いろいろな雑念からもいつの間にか解放されて無心になっている。しゃがんで作業をしているので、時々立ち上がって背中を伸ばし、深呼吸して、大空を仰ぐ。畑を吹き渡るそよ風を身体全体で受けとめる。青空の雲の流れを見る。「自然の大きさ」を感じる一時だ。
単純、素朴な感覚だが、それに阿栗は癒されてきた。野菜を栽培していると幸福ホルモンのオキシトシンが分泌されるとのことだ。作業をしているうちに幸せな気持ちになれる。もし畑で農作業をしていなかったら恐らく阿栗はうつ病とか何か精神的な病に罹っていたのではないかと思っている。阿栗の性格を一言でいえば心配症だ。そして物事を否定的に受け止める。うまくいかなかったらどうするか。今までの人生体験が阿栗をそのようにさせたとも言える。それが野菜栽培をしているうちに段々変わってきた。特に有機栽培の場合は農薬も化学肥料も使わないので、与えられた自然環境の中で野菜達は生きていかなければならない。それは言うほど簡単なことではない。
農作業には一定の法則性があるように感じる。3つにまとめると
栄養分(肥料)の効率的分配(選択と集中・・・脇芽取り、摘芯)
栄養成長、生殖成長の2段階の把握・・・(特に実物野菜)
気候(気温、太陽光、雨)に合わせた作業(特に実もの野菜、根もの野菜)
野菜自体は人間に食べられることを前提に生きて、成長しているわけではない。種の保存が第一の目的だろう。人間の側としては大きく育て、美味しくなるように手を加えている。手を加えるためにはそれぞれの野菜の法則性を理解していることが必要だ。
今年は炎暑になり、菜園の野菜達も試練の夏を迎えている。来年も今年の夏のように猛暑となることが予想されるので、夏の高温対策がこれから不可欠になっていく。
まず屋上菜園の作業者が熱中症にかからないようにする。
・日中の気温の高い時間帯は外してできれば午前中10時30分迄の作業か午後4時30分以降に作業をする。ただ夕方になってもなかなか温度が下がらないので、やはり早朝がいい。
・作業時間を短くする。例えば15分作業したら日陰で5分、水を飲んで休む
・できたらツバの広い麦わら帽子を被る
次は野菜にとっての熱中症対策。野菜にとってもこの高温化は大きな問題になっているはずだ。野菜自身も生き延びる対策を考えていると思うが、人間の側でできる支援内容は以下が考えられる。
・水やりは早朝か夕方に実施する。
・野菜の根の周りを中心に敷きわら、もみ殻を厚く撒いて、畝の表面を覆う。
わら、もみ殻が風で飛ばないように銀色マルチを上から張る。
・畝の上に支柱で逆U字型を作り、遮光シートを張って太陽光が直接野菜に当たらないようにする。
恐らく来年もこの高温化の夏は続くのではないか。
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