野菜こぼれ話~畑のあれこれ ~第四回「トウガラシ」
野菜の「名前」についても、調べてみると様々な逸話がある。
例えばナス。 ナスは英語でEgg Plant(エッグ・プラント)と言い、筆者は中学生のころ英語の教科書でそのことを知って「どうしてナスが卵の草なのか。形はまだしも色は正反対じゃないか」と疑問に思った記憶がある。
そんなナスも原産地はインドといわれていて、そこからアジア各地や北アフリカ、そしてヨーロッパへと伝わったとされている。今日の日本で栽培されるナスのほとんどは黒紫色だが、原種のナスの実は白く、この白いナスがイギリスにも伝わり、そこでエッグプラントの呼び名が生まれたというのがナスを「卵の草」と呼ぶことの真相らしい。
色と言えば「トウガラシ」も、考えてみると少し不思議な呼ばれ方をしている。 トウガラシは英語では「レッド・ペッパー」と言い、ペッパーと言えば当然コショウを指す。これは新大陸を発見したコロンブスが、上陸した土地をインドだと勘違いし、そこで見つけた辛い作物を「コショウの一種」としてヨーロッパに持ち帰ったことから生まれた名前だとされているが、一つ疑問が残る。
コロンブスはトウガラシを、本当にコショウの仲間だと思ったのだろうか。(コショウはほかの木に巻き付くつる性植物だがトウガラシはそうではない)
当時コロンブスはスペイン女王から資金提供を受けて航海を行っており、その「出資者」との約束には「コショウを持ち帰る」という項目も含まれていた。その航海で手に入ったトウガラシを「コショウ(の一種)」としたのは、本当にそう考えていたからなのか、それとも出身者に対して出資の条件を完遂したと言い張るための詭弁だったのか……。
今となってははっきりしない。
ちなみにトウガラシ(唐辛子)には「唐」の文字が入っているが、別に中国から日本に伝わったわけではないらしい。(トウガラシの日本への伝来については、朝鮮半島からという説と、ポルトガル人によってという説がある)
(続く)
【参考文献】 玉村豊男『世界の野菜を旅する』(講談社現代新書、2010) 森昭彦『身近な野菜の奇妙な話』(SBクリエイティブ、2018) 稲垣栄洋『明日ともだちに話したくなる野菜の話』(総合法令出版、2018)
「唐辛子の歴史 | 唐辛子(とうがらし)のおはなし」 https://www.glico.co.jp/info/chili/chili3.html (2019年4月9日参照)