
一般社団法人ジャパンベジタブルコミュニティ(JVEC)の屋上有機菜園の特徴
「ビル砂漠の都市を、屋上を利用することにより美しい田園都市に変えて、人々が健康的に、また幸せを感じながら生活し、仕事ができるようになっていく」
一言でJVECが目指していることを表現しますと以上のようになります。
それでは以下10項目に分けて内容をご説明させていただきます。
1.菜園の場所はビルの屋上の空スペース

都市の中には畑をつくれるような場所は殆どありません。あったとしてもそこにはすぐマンションなどの建物がたちます。唯一空いている場所といえばビルの屋上です。屋上は家賃の対象になっていません。多くの場合、屋上はそのビルの空調機器・電気設備関係の設置スペース、そして不要になった資材の置場になっているのではないでしょ うか。近いうちに処分する予定の古くなった椅子、デスクなどが置いてあるケースを見掛けます。
テナントの社員の皆さんが好んで上がる場所ではありませんね。
2.なぜビルの屋上なのか。そのために必要な条件
ビルの屋上は家賃が発生しません。自然環境的には屋上ですから風通しも良く、また太陽光も良く当たります。その点では光合成をする植物にとってはとても良い場所です。ただ植物が成長するための土はありません。
一方 屋上の周囲には人が誤って落ちることのないようにフェンスが安全な高さで設置されていることが条件となります
3.JVECの屋上菜園では土の深さ18cmで葉物野菜、実物野菜、根物野菜を栽培

屋上に菜園を設置する場合、必ずクリアーしなければならない条件は建築基準法で定められた荷重条件です。1平方メートル当たりどこまでの重さのものが置けるか、という条件です。
基本的条件は180kg/m2です。但し日本の場合は地震が多いこともあり、地震力荷重という厳しい条件が加わります。荷重条件の1/3の60kg/m²です。
屋上に土を入れて菜園を作る場合この地震力荷重をクリアーできることが絶対条件になります。通常畑で使われている土(黒ボク土)は比重が約0.8ですから、10cmの深さで1mx1mの場合80kgとなり、既に地震力荷重を大きく超えていますので、残念ながら使うことはできません。
屋上菜園を設置する場合の最大の難関は土です。
現在JVECで使っている土は栃木県のメーカーが造っている特別な軽量有機土壌です。工場で造っている土ですから、地上の畑にいるような病虫害の心配はありません。土壌の比重は約0.3です。まさに屋上菜園にうってつけの超軽量有機土壌です。この土壌ですと20cmの深さで1mx1mの場合60kg/m2となります。この重さであれば地震力荷重をクリアーします。20cmの深さがあれば葉物野菜、実物野菜、根物野菜が栽培できます。根物野菜ではサツマイモ、ジャガイモ、サトイモ、ニンジン、カブ、そしてダイコン(丈の短い「三太郎」)を栽培しています。


また堆肥も元肥も工場で造っている、軽量の有機肥料を使っています。実際の野菜栽培は更に安全性を考慮して平均18cmの深さの土で栽培しています。なおブドウなどの果樹は地震力荷重を考慮の上、周囲のスペースを十分確保して、平均35cmの土の深さで栽培しています。

4.栽培内容の特徴
JVECの屋上菜園での栽培方法の特徴は8つあります。
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化学農薬、化学肥料を使わない有機的栽培です。安全ですから安心して野菜に近づくことができます。
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栽培土壌は工場で造っている特殊配合の有機土壌です。
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堆肥、元肥は全て植物性の原料です。都市部の菜園ですからご近所に迷惑がかからないように、臭いのする獣糞(牛ふん、豚ふん、鶏ふん)は使いません。
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土の深さ18cmで葉物野菜、実物野菜、根物野菜、ハーブ、花(エディブルフラワー)を栽培します。
土の深さ35cmでブドウ、レモン、ブルーベリーなどの果樹も栽培します。 -
JVEC式菜園生活セット(独自開発のヒノキ板製)を使用します。菜園の設置を簡単に、短時間でできるように。また菜園生活セットは土の深さの調整、支柱をしっかり立てるのに効果があります。
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栽培作業をするにあたって専門の指導員が「なぜそうするのか」を説明。
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必要な場合は病害虫対策として有機JAS認定を取得した自然由来の農薬を使用します。
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自然の生態系を大切にします。土の中の有機肥料を分解する微生物、授粉のために飛んでくる昆虫など。

5.屋上菜園で作業をすることの効果・業態別
現在JVECが屋上菜園を設置し、栽培指導・栽培管理をさせて頂いているビルを業態別に分類しますと以下のようになります。全部で9ヶ所です。
(1)商業ビル 北千住、銀座 →集客効果、会社のイメージアップ
(2)事務所ビル 御茶ノ水、神田、渋谷 →気分転換、収穫体験
(3)老人ホームビル 押上、浅草 →気分転換、栽培体験、収穫体験
(4)物流センタービル 印西市(千葉県)→福利厚生、収穫体験
(5)工場 板橋 →福利厚生、栽培体験、収穫体験、地元コミュ二ティとの交流
業態毎に屋上菜園設置の目的、期待している効果が異なります。その効果ができるだけ大きくなるように、また持続・発展するように各ビルのオーナー様と打ち合わせの機会を定期的に持ち、アイデアを出し合い、更に効果が大きくなるように努めています。
6.屋上菜園の持つ精神的効果
ビルのテナント会社の社員の皆さんが屋上に上がってきて、備え付けの長椅子に座って、屋上菜園の野菜、果樹を見ながら、一息入れています。気分転換のひと時です。自然の植物がパソコンで疲れた眼を休めてくれます。そして野菜に触れるとストレスが解消され、幸福ホルモンの分泌が促されることが医学的にも実証されています。3分間でも5分間でも野菜を見たり、栽培作業(例えば脇芽取り、人工授粉・・・などの世話)をしたらいかがでしょうか。
作業の後、きっとスッキリした気持ちで職場に戻ることができるでしょう。
さらに野菜の有機栽培を通じて生命を育てる喜びを感じることができます。また自然の寒さ、暑さの中で生きて、成長していく野菜、果樹の逞しさから学ぶこともあるのではないでしょうか。
7.屋上菜園から生まれるコミュニティ
