野菜こぼれ話~畑のあれこれ~ 第二回「インゲンマメ」

菜と切っても切れないものに「健康効果の話」がある。
「○○○を食べると痩せる」 「○○○は×××に効く」 「○○○は××病の予防になる」
信憑性や科学的な根拠の有無は別として、こういった話題は巷にあふれている。
少々別の話になるが、民間療法と呼ばれるものにも野菜は数多く登場する。
前回の記事で、野菜は地域で利用法が異なることがあるという話を書いたが、効能やいわゆる民間療法にも、所変われば様々な違いがある。 例えばインゲンマメはフランスの民間療法では「腎臓病や膀胱疾患の特効薬」とされ、マヤ文明では「しゃっくりに効く妙薬」と言われていたらしい。
ちなみにインゲンマメはアメリカ大陸が原産とされているが、原種が特定されておらず、そこから人の手によって改良され栽培されるようになる。「野菜化」にも謎が多い。定説では16世紀にポルトガル人がアメリカ大陸から各地に広めたとされているが、それとは反するように古代エジプトの伝承や中世ペルシャの文献にもインゲンマメとされる野菜が登場している。
話を野菜の健康効果に戻すと、インゲンマメのような今日の私たちからすれば耳慣れない野菜の効用の話は、本を調べていくといくつか見つけることができた。
・レタスを切った時に出る乳白色の液体には催眠作用がある(古代ギリシャ) ・ソラマメの花を蒸留したローションで顔を洗えば色白になる(1600年代のイギリス) ・アスパラガスには若返りの効果がある(インド大陸の伝統医学)
筆者は決して専門家ではないので、こうした効能についてその妥当性を判断できる立場にはないが、一つだけ確かなことがある。
どうやら人は大昔から野菜に健康効果を求めていたらしい。案外、人と野菜の付き合い方は、昔も今もあまり変わらないのかもしれない。 (続く)
【参考文献】 森昭彦『身近な野菜の奇妙な話』(SBクリエイティブ、2018) 玉村豊男『世界の野菜を旅する』(講談社現代新書、2010)