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「場の生み出すコミュニケーション」・屋上菜園の場合

最近本屋に行って目につくのは話し方と聞き方について書かれた本が沢山出ていることです。現在の新型コロナウイルス禍の中で人々が孤立し、人と人とのつながりが希薄になり、断ち切られていくような不安感、さらには危機感も感じさせられます。と同時に、裏返してみれば人と人とのコミュニケーションの基本に立ち返る絶好の機会かもしれません。私の個人的思いとしては人と人とのコミュニケーションでまず大事なのは話すよりも聞くことではないか。さらに言えば聴く、ことではないかと思っています。話すは1種類ですが、聞くは2種類。聞くと聴くです。正確には訊くを加えると3種類になります。聴くは身を入れて、心を込めて聞く、ということですね。人間のコミュニケーションは話す人と聞く人との関係で成り立っています。話す人が伝えたかったことが聞く相手に正確に、100%伝わるかどうか。難しいというのが実情でしょう。伝えるレベルを、そして聞くレベルを少しでも上げていく、というのは私たちにとっての大きな課題です。最近私自身気をつけているのは先入観を持たずに白紙の状態で話を聴く、ながらではなく相手の話に集中する、ということです。ある意味では緊張を伴います。以上のことは人が向き合って行う1:1の人間同士のコミュニケーションです。


最近私が気付かされたのは「場のコミュニケーション」です。友人と二人で公園のベンチに座り、青空を見上げていました。

私「春らしい青空になってきたね」

友人「温かさが感じられる」

私「桜の花もあと2週間もすれば満開じゃないかな」

友人「今年はお花見をしたいね」

私「今年も桜の花が見られる。幸せ」

この会話には全く緊張がありません。しかしお互いの気持ちは通い合っています。公園が「場」になっていて生まれてきた会話です。


ある日、ある時。オフィスビルの屋上菜園で、作業のお手伝いをしながら利用者の方と話しをしています。相手は定年退職されて悠々自適の生活をされている男性です。

私「スナップエンドウが元気になってきましたね。良かった」

Oさん「なかなか大きくならないのでダメかなと思っていたんですが、なんとかなりそうです。」

私「支柱を立ててネット張って誘引してあげてください。ツルと葉が重ならないように拡げて、展開し、全部の葉に太陽の光が当たるように誘引をお願いします。」

2人でスナップエンドウを見ながら会話をしている。スナップエンドウも含めた、人:スナップエンドウ:人の会話だ。菜園の中だからこそ出来る会話、菜園いう場が生み出すコミュニケーション。


「場が生み出す」コミュニケーション。この場合屋上菜園という場で利用者はお互い菜園を見ながら情報交換をしています。野菜栽培が話題の会話。このような会話の自然な形での積み重ねを通じて都会に住む人と人との間に「緩やかな」つながり、更にはミニコミュニティが自然とできていきます。

地方では農作業・行事を中心した村落共同体が崩壊しつつあります。一方都市部でも終戦後迄あった隣近所の付き合いも薄れつつあります。最近は「孤独病」という病気が増えて慢性化しているとのこと。

まず都市部で「緩やかな」つながりを産み出すことが大事です。屋上菜園が楽しいコミュニケーションを生み出す場になるのではないでしょうか。これからの時代は通常の1:1の人と人とが向き合うコミュニケーションの他に、「場のコミュニケーション」も必要ではないかと思います。

そんな期待を込めて屋上菜園の普及活動に取り組んでいます。


(阿部)

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