野の草のように
阿部 義通 阿栗がそれに最初に気が付いたのはJR武蔵野線南浦和駅のプラットフォームのベンチに座っていた時だった。 見るともなしに向かい側のプラットホームの下、線路の脇に草が生えている。レールと枕木を支える砂利の中から、1本雑草が伸びている。真夏の暑い午後、熱くなっている砂利の中から緑の茎と葉を伸ばしている。なにもそんなわざわざ過酷なところで枝葉を伸ばすこともないのではないか、と一瞬思った。・・・がそのあとすぐ、雑草の声が聞こえた気がした。「私たちは風に運ばれて種が落ちた場所で根を伸ばし、茎葉をつけていきます。途中で枯れてしまうことが殆どですが、たまたま線路の砂利に間に飛んできて、溜まった土があれば、そこで生きていこうとします。置かれた場所で生きようとする、それが私たちです。溜まった土の上で枯れて、私たちもいつか土になっていきます」 そのことがあってから電車に乗った時、阿栗は窓外の風景を見ながら、線路の間、壁面の雑草に眼をやることが多くなった。誰からも世話されずに生えている雑草。どちらかと言えば邪魔者扱いされる雑草。それでも生きている雑草。...
