時代小説「欅風」(71)天岡の村請制と助郷制度改革
天岡は氏安から指示を受け、桑名44村の村請制と助郷制度についての改革案をまとめていた。割当てられた石高は検地で決まっている。石高の引き下げは認められる筋合いのものではなかった。石高は常に実際より高めに決められていた。以前九州の天領の一つ、天草で現実を考慮しない余りに高い石高...
時代小説「欅風」(70)才蔵の生き甲斐
一年が経った。 才蔵は郷助の畑で次郎太、孝吉と一緒に農作業に汗を流し、郷助の作業場で郷助を助け、最初は月1回だったが、最近では月二回、波江の寺子屋で和算を教えている。 寺子屋への行き帰り、才蔵は「我ながらこのような日がくるとは 思っていなかった」。労働に励み、人々の笑顔に接...
時代小説「欅風」(69)藩の祭・様子
狭野藩は一万石のまことに小さな藩だ。そのような藩を豊かにするためには、物産の輸出だけではなく、大阪、京都など近在の町から、また村から来てもらい、お金を落としてもらえるような仕組み、施設をつくらなければならない。 そのため年二回、狭山池での祭りを開催している。春、桜が満開の頃...
時代小説「欅風」(68)狭野藩 藩校開設
狭野藩で始まった塾は今年で三年目になる。毎年それぞれの塾は受講生で定員一杯になった。武士のための護民塾では大阪、京都、堺から高名な先生を招いて、講話を聞いた。題は、国を治めるということはどういうことか、物価はどのようにして決まるか、これからの社会はどのようになっていくか、な...
時代小説「欅風」(67)氏安 御料地担当の試みを受ける
氏安が黒書院で御料地担当の役目を仰せつかった日、利勝から次のような意外な言葉があった。 「暫く江戸城で御料地のための会合がある。藩には一ヶ月以上帰れぬやもしれぬ。あらかじめ書状を藩に送っておくように」 氏安は内心、それほどの打ち合わせが必要なのかと思ったが、顔には出さず、...
時代小説「欅風」(66)狭野藩 江戸に物産店開設
狭野藩では江戸に藩としての店を出すことにした。店を出すための準備は戸部新之助と天岡文七郎が担当した。藩主氏安の承認の元、戸部が直営店の最初の責任者となった。 新之助は三枝の手紙を送った。 「一年の予定だったが、あと一年江戸に留まり、狭野藩の店の立ち上げをすることになった。た...